そのコンセプトに打たれた
発表されて以来、色んなサイト/紙面で紹介され、様々な受賞歴のあるソフトなので皆様ご承知だとは思うが、私が知ったのは2005年、長年の友人、三枝樹氏の麻雀専用ブログTOBOO!で紹介された時だ(そのサイトは既に閉鎖された)。
現在も進化を続けているこのソフトではあるが、当時、既に今ある機能のほとんどは完成していたように思う。
冴子先生とのトキメキモードでは今よりも簡単に、彼女のハートを射止めることができたような気がするのは気のせいか(笑)。
数多くの麻雀ゲームソフトがある中、私が感心したのは「5時までモード」。感動すら覚えた。
就業時間内に隠れて麻雀ゲームをやることの是非や、その意味、あるいは心情なんてどうでもいいのだが、このどうでもいいことにここまでこだわった、そのことが素晴らしいと思った。
牌の名称や用語を自由に定義し、捨て牌を縦に並べてしまえば、このソフトそのものの存在を知らない限り、操作画面から麻雀だと気付く奴はいないだろう。
この「5時までモード」を心から楽しむためには(=違和感なくゲームに没頭できるようになるまでには)、かなりの修練を積む必要がある。言い換えると、麻雀やってる気分にはなかなかなれないのだ。私的には、自分の聴牌を把握できるようになるにも苦労したが、相手三人の捨て牌を理解できるようになるまでが大変だった。いや、まともに頭の中に入っているかどうか今でも怪しいものだ。
世の中のほとんどの麻雀ゲームがリアリティを追求している中、まったく別の所を目指している姿勢は、素敵なことだ。
自分の例で言うと、冴子先生やイルカと対戦しても特に面白いとは思えなかった。
何か、この開発者、冗談が過ぎるというか、才能を無駄遣いしてるんじゃないかとも思った(失礼!)。
ソフトウェアとしての魅力
この「Cell_雀」には二つの大きなトピックスが存在する。「完全なフリーウェア」であることと「エクセルファイルとして構築されている」ことだ。
フリーウェアとしての質の高さは、「5時からモード」「対戦モード」でも明らかだが、趣味で作られたソフトがついついおざなりにしてしまいがちな各種設定機能(コントロールパネルと称されている)の充実ぶりや使い易さに伺い知ることができる。
たぶん、大きな反響と賛辞とを受けているからこそ、開発者のモチベーションが維持され、結果としてのきめ細かな保守につながっているのだろう。
公式サイトの履歴情報によると何度か思考ルーチンがバージョンアップされていることがわかるが、一般的には商用ソフトでもないものが、麻雀ソフトのある意味、一番のキモともいえる思考ロジックが何度も改訂されるというのは「まれ」なことだ。
その労力(=改訂のための労力)の対価として得られるものが、カタチでないものだけに、その行為は崇高なことだと言える。
こうした開発行為に対して、ソフトウェア業界側(に代表される、いわゆるIT業界全般)からの多くの賛辞は妥当なものだが、麻雀業界(というものが本当に存在するのか怪しい)からは何の反応も無いことにも、淋しい思いもある。
本当の意味で、麻雀という遊技/競技の状況を憂えている組織なんて、明日の麻雀界をこうあるべきだなんて考えている組織なんて、今の日本には無いのだ。
誰もが驚くことの一つに、このゲームの実体が、エクセルファイルであるという事実がある。
VBA(マクロ言語)だけでもこれだけのことが実現できるということを実証した意義は深い。
ユーザインタフェース(操作画面)以外のメインロジックは、普通のVBによるアプリケーションプログラムと同じように組めるのだから、出来ないことじゃないというのは頭では理解できても、実際にこれに着手した動機、意欲には開発者のなみなみならぬパワーや意気込み(もしかすると思い込み?)が、ひしひしと伝わってくる。
もちろん、それを実現した開発行為が大変だったことは想像に難くないが...。
どうしても馴染めないこと
このゲームをやっていて、自分自身について気付いたことがある。
自分は麻雀牌を絵柄で認識している、という事実だ。
「一萬」という表記では何も思わないのに、「4◎」や「7Ι」をやだと理解するにはかなりの時間を要した。いや、理解はしているのだが、すんなりと頭に入ってこないのだ。
自分は各種の数牌を「数字と種類の組合せ」として捉えているのでなく、もっと漠然とイメージしていたのだと気付いたわけだ。
「5時までモード」をやる際には覚悟して、頭の中の切替フィルタを常時、働かせているくせに、「5時からモード」の麻雀卓画面では、つい気が弛んでしまっている(笑)。
この「5時からモード」における牌の表記については、今でも馴染めていない。
とは言うものの、そうした(私的な意味での)馴染め無さを補って余る程の魅力を充分に備えた麻雀ゲームであることは間違いない。
開発者であり、こうしたスタンスでメンテナンスを続けておられる武藤氏のことを心からリスペクトしている。