麻雀打ちの頁/雀のお宿

配信済みのRTDトーナメント2019の対局を対局者自身が解説する番組シリーズ「RTD Tournament 2019 Player's Edition」の紹介と感想。

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RTDプレイヤーズ解説

RTDプレイヤーズ解説

麻雀コンテンツの頂きかも…

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ドキドキは突然訪れた

 いったい、何を観せられているんだろ?
 2週間前に配信されたRTDトーナメントの対局の解説を張Pと猿川Pがやっている。
 アタキが既に2回見たグループA1回戦の対局が流されながら、ナビゲーター役の張Pの問いに猿川Pがとつとつと応えている。
 ドキドキした。自身がトップだった半荘の一打一打、その時何を考えていたかを猿川Pが話している。
 ワクワクした。猿川Pの打牌に関する意見をこんなに長時間、こんなに詳細に聞けたのは初めてだ。こりゃ、何を観せられているんだ!
「ぼくは、あんまりマージャンの話はしないんで」
 猿川Pの言葉に「そんなプロ、ありかよ!」アタキは iPad に向かって一人ツッコミを入れたけど、今、自分が至福の時間に浸っているのを感じていた。この半荘、トップが猿川Pであるという安心感もあった。

 なんかボーッとした感じのまま、2回戦の解説が始まった。張Pの今度の相手は鈴木達也P。好調だった猿川Pをまくって2回戦のトップだったのが達也Pだ。
 普段は口数が多くない印象の達也Pはかなり丁寧に、そして詳細に自分の思いを語ってくれた。
 対戦者への人読み、押し引きの境界線、自らの感情をこんなに語ってくれて、それを今聞けている幸福ったらない。
 逆転してトップを奪った半荘なので、成功した選択が多いのは当然なのだけど、達也Pと一緒に達也Pの麻雀を反すうしている。なんて贅沢な時間なんだ。

 1回戦2回戦とも、スグに見直した。新たな発見もあった。やっぱ、ドキドキしてワクワクした。
 なんか、すごい経験したな、とだけ思った。
 このドキドキとワクワクの正体は何なんだ。

観戦者が求めていたもの

静かに始まったセルフ解説という試み

 今年から規模が縮小されトーナメント制にはなった RTD対戦だけれど、相変わらず面白かった。結果はともかくサバイバルマッチで平賀Pを観れたのも嬉しかったし、多井Pの倍満見逃しなんてあるとやっぱ別格だよなぁなんて思ってしまう。
 本戦になって最初の対戦(グループA)も小林剛Pの結果は残念だったけど、本当に面白かった。
 その配信後2週間経って放送されたのが、この「RTD Tournament 2019 Player's Edition」。
 出演者も見ているこっちも結果は全員が知っている中で、張Pのナビゲーションでの対戦振り返り番組。勝者にコメントを聞きながらの感想戦。テレビの麻雀チャンネルでなく、ビデオの麻雀カテゴリーでの(どちらかというと)ひっそりとした配信のされ方だ。
 その番組にこんなに勝手に一人でときめいてしまって、自分でもなんか違和感を覚えた。

 ツイッターとかの感じでも、誰もそんなに騒いでいない。えっ、アタキだけ、こんなに興奮しているの…。

猿川Pと達也Pだったから…

 白状しなくちゃいけない。猿川Pと達也Pは、雀歴40年のアタキにとって超アイドルである。
 他にも好きな打ち手はたくさんいるけど、この二人の麻雀がとにかく大好きだ。そして、その好きな二人がたまたま解説になったものだから、世間一般の視聴者よりもドキドキワクワクが大きいだけのことかもしれない。
 トークを前面に出す方とはいえない寡黙な部類に入るだろう二人が、詳細に丁寧に自分自身の打牌や感じたことを話している、そのシチュエーションだけでもファンとしては嬉しい。この時間は楽しい。

 で、翌週に放送された3回戦4回戦も十分に満足したさらに一週間後(実は一昨日)に配信された、グループBのセルフ解説(今回は内川P&勝又P)番組を観て確信した。
 この番組、面白い!
 ナビゲーター張Pの立ち位置なのか人柄なのか選手との関係性なのか、内川Pも勝又Pも、それはそれは十分過ぎるほど、打牌選択の理由を語ってくれた。今となっては失敗と思える選択にしても納得いく説明で、一言一言をワクワクしながら聞き続けた。
 勝又Pがどう考えているかなんて(うすうすそうだろうとは思っていたけれど)アタキの20倍くらい深くって、それを知れるのは本当に嬉しいし楽しい。
 トリッキーな選択の理由なんかでなく、その当たり前の選択をしたバックグラウンド、思考の背景に触れることができたことに感動した。

 というわけで、一昨日に配信された「グループB1回戦2回戦 Player's Edition」を観たせいで、今この小文を書き始めることにした。
 猿川Pと達也Pのセルフ解説から受けた感動や衝撃や驚愕や興奮を内川Pも勝又Pもアタキに与えてくれた。それぞれベクトルは微妙に違うけれど、アタキが麻雀コンテンツに求めていたのは、実はこれだったんじゃないか。そんなふうに思えてきた。

これを待っていた

 この50年間で最も成功した麻雀コンテンツは漫画である。戦術書でも小説でもなく、映画でもTV番組でもなく、ゲームでもアプリでもなく、漫画である。何をもって成功とするか微妙な点はあるけど、少なくとも(そんなに麻雀漫画を読まない)アタキは勝手にそう思っている。
 その麻雀漫画が麻雀漫画として必要十分な要素は何だろう、どんな場面かしら。
 誰も言ってないのでアタキが教えましょう、それは「打牌選択時のモノローグ」である。
 その場面でその牌を切った(あるいはスルーした、立直した)という事実だけでなく、こんなこと考えてそうした、というコトワリこそが麻雀漫画の醍醐味なんだ。
 麻雀漫画のヒーローの多くは瞬間の思い、刹那の判断で僕らを魅了してきた。
 そして、今回放送されているこのセルフ解説は、麻雀漫画が持っていた必要十分な要素(条件)を満足したコンテンツであると言えるのではないか。
 こんなコンテンツをずっと待っていたんじゃないか、アタキも、世の中の多くの麻雀愛好者も。

 大昔にアップした麻雀観戦についてのコラムの中で、麻雀ライターでもある友人の「観戦者が打ち手に質問もでき、打ち手も言い訳ができるような環境」という意見を紹介したけど、18 年経過した現在、この世界に近づける環境は整いつつあるのかもしれない。

拡がる(かもしれない)未来

似たコンテンツは存在するけど

 YouTube にアップされている日向藍子Pの「麻雀するしない」内の「トッププレイヤーの思考に迫る」シリーズや、麻雀動画の「ヘッドホン麻雀」といったコンテンツは打牌1枚づつについてそれを選択した思考について当の本人に深く聞けるものだ。
 どちらも素敵な番組だが、そもそも番組の目的が違うような気がする。
 麻雀が上手な人はこんなことを考えながら麻雀を打っているんですよ、ということを伝えることが「思考に迫る」や「ヘッドホン麻雀」の主旨なんだろう。うん、絶対にそうだ。
 今回配信されているセルフ解説番組の主旨は、「もう一回、対戦を味わいましょう、勝者の解説と一緒に」なんだ。そしてありがたいことに「張Pのツッコミというおまけ付き」なんだ。
 結果として勝者の思考を知ることになっているけれど、そこには先生が生徒に指導する的な立場はなく、こんなことを考えてました、その時はそれが正解だと信じての選択です、それ以上でもそれ以下でもありません的な、極めて真摯な姿勢やプロの打ち手としての潔さが垣間見れる。そしてそのことに心が震える。

ある友人の提案

 同年代の麻雀仲間とさっきこの番組について話し合った。インターネットや Abema TV についてはアタキが唯一の情報源である彼(K)は、達也Pと瀬戸熊Pオシの昭和雀士だ。
 Mリーグよりも RTD リーグがお気に入りだというKはこんなことを言った。

  • 張P以外のナビゲーター(例えば小林未沙や日向藍子Pや日吉辰哉P)だとどうか
  • 途中でストップしてじっくり話を聞いてもいいんじゃない
  • 敗者の話も聞きたい

 Kは麻雀は強いが、アタキほどは頭がよくないので勝手なことを言ってしまう。
 彼の意見にはどれも反対だけど、まぁ世の中にはそんな意見があっても許そう(笑)。
「敗者の話」なんかじゃなく、「同時に4人分の話が聞きたい」くらいの発想を持ってもらいたい。

これからのドキドキと少しの危惧

 これからもひっそりと配信されるであろうこのセルフ解説番組が楽しみでしかたなく、もしかすると本戦以上に期待している自分が、なんか気持ち悪い。
 Abema TV のプレミアム会員でないアタキにとって、この番組がいつまで無料で何度も観れるのかが今最大の関心事だけど、有料コンテンツになったら、たぶんこの小文は書き換えるか削除することになるのだろうと思える。
 変更も削除もしたくないので、お願いです、いつまでも無料で配信し続けてください、藤田社長。

 Abema TV のせいで(あるいは Abema TV のおかげで)日本全国の麻雀愛好家の何割かのライフスタイルが大きく変化したと考えているのはアタキだけではないはず。アタキなんて一昨年からある時期の毎週月木曜日の夜はどこにも(雀荘にも)出かけなくなってしまったし、残業が入りそうなら早目に手を打つ術もうまくなった。
 テレビゲームや配信ゲーム類を一切やらず、雀荘にしか居場所がない昭和な麻雀好きが、タブレットやパソコンの前で他人が囲んでいる様子をずっと眺め続けて、それを人生の至福の時間のように思わせてしまった、そんな人生観を変えてしまう力が Abema TV の麻雀チャンネルの RTD リーグにあったわけで、何が言いたいかというと、ずっとずっとどんなカタチでもこの番組配信が続いてほしいというわけで、なんかうまくつながらないけどそんな気持ちでいっぱいだ。

 これから先、いろんな勝者が解説することになると思うけど、こんな解説は嫌だ、の一覧。
 ・他者の選択をあからさまに非難、批判 … 幸い、こんな奴はいない。
 ・張Pの質問に対して、そんなことは当然でしょと言わんばかりの軽い対応。
 ・閲覧者の雀力を必要以上に見下して丁寧過ぎる言葉遣いで初心者向けの説明(RTD を観る初心者はいないし、いたとしても背伸びして観ているはず)。

 とは逆に、こんな話はいっぱい聞きたいは以下の通り。
 ・解説者でない打ち手がこう言っていたとの外部情報(張Pからでも○)。
 ・対局とは直接関係の無い考え、麻雀観。
 ・張Pだったらの選択。

 アタキの周囲には残念ながら未だに Abema って何?Mリーグって?という奴はかなり多い。
 彼らも彼らなりに一所懸命人生を送っているので、こんなに面白いモンが世の中にあるんだぞ、みたいなことを押し付けるのはちょっと違うと思っているけど、それでも押し付けたくなるコンテンツというのは確かに存在してて、このセルフ解説番組はそれの一つになってしまった。

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