麻雀打ちの頁/雀のお宿

三人でも四人でもできるサンマシステム。宮崎県都城市牟田町での記憶、その三。

公開

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三人というシステム

牟田町

 若い頃の私は三人でやる麻雀のことを「サンマ」と呼ぶのだとばかり思っていた。
 サンマは三人でやることもあるが、同じように四人でやることも多いのだ。
 グループによっては四人集まってでないとサンマが始まらないことだってある。サンマは競技人数の制限から発生したルールかもしれないが、独自の発展を遂げた今となっては、三人でやるから、という単純な理由で「サンマ」なのではなく、その魅力的な種々の取り決めがサンマをサンマならしめていると言える。
タイショウのサンマは三人でも四人でも行われた。

 客が二人来れば店長が入って卓が立つ。
 客がもう一人来ると店長が席を代わり、もう一人来て四人になれば四人でサンマを囲む。
 更にもう一人の客が来た場合には、先の四人の内の誰かが卓から抜け、新しい客と店長の三人とで別の卓を立てることになる。
 それ以上の人数になった場合には、店長はもう卓に入ることはなく、客同士だけの卓が次々に立つことになるが、客が増えてくれば店長だって忙しくなるわけで、よくできたシステムだ。
 客側にしても最初の一人以外は、待たせられるのは長くても一半荘だけなのでありがたい。

 三人の場合と四人の場合とで異なってくるものに、トップ賞の価値がある。
 この店のサンマは、半荘制東南廻しのナシナシで 35000 点持ちの 40000 点返しであり、トップも四人の方がそれなりに高い。
 そしてここでは連勝祝儀というものを採用していた。
 連勝すれば卓に付いた他の競技者から、一つの連勝に付き、チップを一枚づつ貰えるというオプションだ。二連勝ならば一枚のチップを、三連勝ならば二枚のチップを貰えるというもので、例えば四人の卓で三連勝してしまうと、(1×3)+(2×3)の都合九枚ものチップを手にすることができる。
 連勝の数には制限はなく、四連勝でも五連勝でもそれなりの枚数のチップが祝儀となる。三連勝なんて状況では全員の目の色が変わる。連勝者も他の二人、あるいは三人も真剣さが増し、白熱した闘いになる。
 私が少しだけ納得できなかったことの一つに、この連勝オプションの支払い対象者の問題があった。
 誰かの連勝途中で運悪く席に付いた人間は、勿論のこと、この連勝させたことにより支払い義務が生じるのだが、問題なのは途中で抜ける人間がいることだ。
 自分の責任もいくらかはあって連勝なんて事態を招いた人間が、席を変わって別の卓に付く、というのが私は気に入らなかった。
 そんな奴はお帰り願うのがスジだと思うのだが、店長はあまり細かいことを云々する性格ではなかった。

 役満賞も古くからのやり方、出和了りでも自摸和了りでも全員から一定額の祝儀を貰えるというものだ。一人当たりチップ四枚の支払い義務がある。
 四人で囲んでいる場合には、抜け番の人間(通常の北家に相当する者)も支払わなければならないのが面白い。役満の出現の度合いは三人でも四人でも変わらないのだが、たまたま四人の卓で役満を和了れるとラッキーなのだ。
 抜け番の人間はほとんどの場合、自分の下家、つまり親番の手を覗いているわけだが、親が役満を聴牌している場合には誰もが他の二人を応援することになる。
 東の一局の抜け番にとって最悪の展開というのは、一度も牌を触らずにゲームが終了してしまうことだ。
 つまり、一局目で誰かがドボンしてしまって、当然のように自分はマイナスなのでいくらかの支払いとなる。これがさらに役満の為に誰かがトン場合には悲惨さを増す。 役満賞まで支払わなければならない。

 ナシナシなので面子選択による和了りは認められない。
「いずれかの役が固定されていなければ和了れない」というのではなく、「いずれかの役の少なくとも一つの役があることが保証されている和了りならOK」という、いわゆる緩い完先だ。

六筒七筒七筒七筒八筒八筒八筒九筒九筒九筒 暗槓裏一索一索裏

 聴牌してスグに高目の六筒を自摸ったのだが、もし出和了りなら倒してイイのかどうか一瞬躊躇してしまいそうな牌姿だ。
 勿論、どの場合にも役はあるのでOKだが、この時のチップの集まりは物凄いもので、役満賞の二十四枚(W役満なので四枚×2×三人)、トリが八枚(誰も鉄砲を持っていないので四枚×二人)、これにドボン賞や通常の清算と合わせるとヒラのデカピンでのトップよりも大きかった。

一索一索一索二索三索四索四索五索七索八索九索九索九索

 ラスト三索を見逃して、六索で和了った。
 この店での九連宝灯の扱いは特別に変わったものだった。
 通常の役満なら、役満の点数とチップのやり取りなのだが、この九連宝灯だけは変則的なのだ。九連宝灯が出ると無条件に半荘は終了するのだ。
 それまでの持ち点がいくらあろうとも、またチップを何枚持っていようとも、更には誰かにチップの貸し借りがあってもなくても、九連宝灯が出た途端にすべては御破算になり、他の二人、もしくは三人の全員がドボンし、持っているチップがゼロになってしまうという代物だ(因に半荘開始時には全員がチップを十枚ずつ持っている)。
 だから、九連宝灯は常に一発大逆転の手であり、それまでの何もかもを無と化してしまうスーパーな役満なのだ。
 私は半年間で一回しか和了ってないが、四回程遭遇しているので、九連宝灯に関する収支はマイナスだった。

 この街の男達は、優しい奴らばかりだった。というよりは、外部からやって来た人間をどう扱ってよいものか常に戸惑っているようにも思えた。
 どこに行っても旅打ち気分の私にはかなり御しやすい相手ばかりだったのだが、彼らに対してはかなり傲慢な気分を持ち合わせたまま、この土地を後にすることになって、少しだけ自分が嫌になったのも事実だ。
 それから四年以上たって、久しぶりに訪れた「灰の降る街」の不思議な麻雀は、何も変わることがなく、嬉しかった。