麻雀打ちの頁/雀のお宿

ある一軒のフリー雀荘における場代の変遷について。雀荘経営において重要な要素の一つである場代は実はレートやウマと密接な関係性があり、それを抜きに料金を決定できない。

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場代での悶着

あくまで風速のある雀荘での話

あるところに一軒の雀荘があった。
そこは昔っから、いわゆるピンのフリー雀荘だった。
アタキが出入りを始めた頃は今から二十年近く前のことで、その頃のフリー雀荘はどこも小バクチを楽しむ場所だった。 その雀荘も他のフリー雀荘と同じように、多くの善良なサラリーマンと一部の危ない人種とで成り立ってた。
誰もが手軽に遊べるというよりは、少しは腕に覚えがあると自負している打ち手が集まってた。 みんな、勝ったり負けたりしてた。

一発が千円だった。 裏ドラ(の現物)も千円だった。
裏が二枚乗った手を一発でツモれば九千円の収入なわけで、これはハコを喰らってもまだお釣が残る勘定だ。
ウマは、原点に満たない者だけの順位で決定される沈みウマで、マルA状態ならば、沈んだ二着がマイナス千円、三着がマイナス二千円、ラスがマイナス三千円で、これはすべてトップ者の収入だ。
マルAのトップ者は通常のトップ賞二千円の他に、六千円がプラスされる勘定。
Bトップならば四千円、Cトップならば三千円というようにトップの取り方によって、収入が微妙に違う方式だった。
「ピンのワンツースリー」と呼ばれる、この地方ではポピュラーなもので、後年、この呼び方を聞いた友人は 「表計算みたいなウマだなぁ」と言ったが、アタキはその以前に 「ウマみたいなソフトだなぁ」と思ったりしてた。

そして、この時の場代は千二百円で、トップ者が一人で支払う規則だった。
アタキが出入りをやめたのは、場代が千五百円に値上がりした頃だった。


そんでもって時代も移り変わって、この雀荘もピンのレートではあるんだけれども、場代をさらに上げなければ、やってはいけんようになって、場代は上がっていった。
つい、この間までは、トップ者が千円支払って、その他の三人が五百円を支払うという、都合二千五百円だった。
一発も裏も五百円になった。
つまり、トータルでやり取りされる金銭の額は小さくなったわけだけれど、場代は上がっていったわけだ。

困ったことに、客がどんどん少なくなっていった。
客が少なくなった原因は色々あるんだけれども、今回のテーマではないので無視。
客が減っていくと、なかなか卓が立たないことが多くなって、ひいてはそこから、客への貸し金が増える、という悪循環が始まった。 つまり、替えの客がいないために、負けが込んだ客のアウトを立て替えてでも、卓を継続させないと場代が上がらないわけで、雀荘としては場代こそが唯一の収入源であるためにどんなことをしても卓を立てる必要があって、客の方も慢性的に、平気で店にアウトを頼るようになって、中にはこれがあまりに大きくなって、その雀荘に足が向かわなくなってしまう客なんてーのも出てくるわけで、経営者としてはまったくもって困った状態になった。

あぁ、いかんいかん、別に麻雀屋さんやってて大儲けしようなんて気はないんだけど、このままではいかんことは明白だ。 よっしゃぁ、いっそのこと、会員制にしてしまって、信頼できる客だけで、細々とでもいいから、健全な経営を目指そうと考えた。

客筋は、まぁ、よくなった。
アタキにすれば、何をもって客筋がイイと判断するのかも問題だよなぁなんて考えたりもしたが、その雀荘の経営者にすれば客の全員の連絡先が明らかで、ワイワイガヤガヤとなごやかな雰囲気で卓が立ってるので、よけいなトラブルも起きずに、とても具合がいいのだ。 全員の気心が知れてて、アットホームなムードなので、店としての応対も楽チンなわけだ。
だけど問題は残った。
予想していたほどには売り上げが伸びない。 つまり、卓が立たない。
卓が立っても長くは続かない。 つまり、場代がなかなか上がらない。
何故だか、考えた。
これはレートの問題に違いない。 負け続ける人間にとっては、かなりキツイレートだ。
店としては、全員に公平に負けてもらいたいわけだけど、実際そんなことはなく、負け組の人は五回の内の四回くらいは負けて帰る。 昔よりもやり取りされる金額が小さくなったとはいえ、まだまだ大きいレートなんだ、少なくとも、今のお客にとっては。
勝って帰ることが多い(と言うよりも実際には、負けずに遊んで帰ることの方が多い)連中だって、ウチで、稼いでやろうなんて考えてる打ち手は見当たらない。 まぁ、適当に時間が潰せて、ワイワイ楽しく囲めたらマル、ってな気持ちの人間ばかり。
うん、今よりももっと、お金の動きを小さくするしかない。
こんな風に思った。

アタキには言いたいことがいっぱいあった。
本当に売り上げを伸ばすには他の方法があるんじゃねえか。
レートの問題なのか、ルールの問題なのか、サービスの問題なのか、考え方の問題なのか。
本当の意味で健全な雀荘経営があるとしたら、少なくとも法律を犯してるのはまずいし、身体に障害のある従業員がいることでの補助金制度のことを調べたり、アタキが関わって少しだけ成功した別の雀荘の例なんかを話したけど、何だか、違うって感じ。
そんなにラクして、食っていこうなんて、チチチ、って思う。
だけど、アタキが何を言おうと、もう残された道は、とにかく金銭の動きを小さくするしかない、って話になった。
じゃ、具体的にどうすべ、だ。


現在のシステムは、ピンのワンツースリーで、Bトップの場合だけ浮きの二着が千円貰える、という変則システム。 C状態時では二着も三着も浮き分以外の収入はない。
面白いのは、誰も三万点に満たない状態の時で、この場合には四着だけにマイナス二千円のウマが付く。
一発も裏も五百円で、場代は四者全員が均等に六百円払い。

通常のトップ賞以外のウマのやり取り
A状態B状態C状態D状態
トップ+6000+3000+3000+2000
二着-1000+1000(0)(0)
三着-2000-1000(0)(0)
ラス-3000-3000-3000-2000

何だかヘン、って思った人は偉い。
BトップとCトップの時のトップの収入が変わらないのもヘンだし、そのくせDトップ(なんて言い方は通常しないケド)の時には少し違うのもヘン。

Bトップ状態の二着の立場にしたら、Cトップになったら自分の収入が減るので、もしトップに届きそうになければトップと結託して、今の状態を守るのが得策なのもヘン。
ラスが確定してしまった場合には、何をやっても得にはならんので、少しでも自分の負け分を減らすべく1000点の和了りでもしないよりはマシなわけで、これでは何のためのウマなのだろうってな感じ。
まぁ、とにかくこんなルールになっちまってるんだから仕方ない。
アタキはB状態の時の二着へのプラス還元を止めるべき(というか、元々そういうルールだったし、その方が圧倒的にポピュラーでもある)だと言うのだが、これを採用することによってゲームの進行は早くなったという事実があって、それは直接売り上げに貢献しているので取り止めにはできないらしく、それならそれで、C状態の二着にもプラス還元しろよ、と言いたいが黙っている。そうするとD状態にも言及しなければいけない。
これらの状態の発生頻度は、アタキの感覚では、八半荘の内、五半荘がB/二半荘がA/一半荘がC。 Dは、二十半荘に一回も出ないくらいだ。


なんか、話がおかしくなったが、じゃぁどうすべ、だ。

レートを半分にしよう。
誰でもスグに思いつく。
しかし単純に半分にして、つまりテンゴにしたとすると、当然、場代を安くしなければいかんだろうってことになって、それはかなり苦しい選択になる。
客の数が限られていることにも加えて、別のある事情により、この雀荘は週の内、四日間しか営業できないのだ。
限られた営業日数と限られた客の全体数で、場代を下げてしまった場合、とんでもなく売り上げが落ちるのは間違いない。
ただ、レートを下げるなんてことではいかん。
アタキ的な本音では、レートと場代の相関を考慮する発想そのものがバクチ場的であって納得いかんものだ。 レートはレート、場代は店が客に対してサービスする内容の対価であるべきだと強く思っている。
テンサンであれ、テンゴであれ、素晴らしいサービスを提供しているクラブであるなら、一半荘に二千五百円の場代であっても、ちっとも不思議じゃないって思ってるし、逆に、灰皿かえて、おしぼり出すだけならレートが二百円であっても場代を千円以上出すのは、絶対、イヤだ。
このレートと場代を相関させて考えてしまう経営者のバクチ場感覚については、別頁で考察の予定だ。

じゃぁどうすべ、だ。
実はこの雀荘では、赤牌を七つも採用しているという事実がある(祝儀とは無関係)。
裏ドラなんて見なくても、通常のドラと赤ドラを合計すると全部で十一枚ものドラがあることになる。 平均すると一人の手に 2.75 枚ものドラが入る計算で、これではいつでも満貫の手である。
つまり、ハネ満倍満が頻繁に発生するのだ。
この赤ドラを少なくすれば、動きが小さくなるんじゃないか、ってな考えだけど、実はこれも大疑問だ。
現実的には、このドラがたくさんあることで、多くの人間に一発逆転の可能性が残されているという部分もある。 ただ点数の動きを小さくすることが本当の目的なのではなく、弱者の負け分を小さくすることが一番必要なことなわけで、本当に赤ドラが無くなってしまえば、ちゃんと手作りできる人間の有利さが大きくなって、逆の結果を引き起こす可能性がないとはいえない。 誰もが偶然に大きな手ができるようなチャンスの芽をなくしてしまうのはよくない。
経営者側が一番望むのは、ジャンケンポンでトップを決めてもらいたいのだ。 ここにくるお客全員から、広く一様に場代を貰いたいのだ。


ってなわけで、ウマの話だよなぁ、とアタキは思った。
今のヘンな部分も無くなって、弱者も救済できて、尚かつ面白みが増すようなウマの仕組みを考えようと思った。 だけど、トッピな考えだと誰も付いてきてくれないので、あくまで現在のシステムのちょっとした変更だ。

通常のトップ賞以外のウマのやり取り
A状態B状態C状態D状態
トップ+6000+3000+1000+ 0
二着-1000(0)(0)(0)
三着-2000-1000(0)(0)
ラス-3000-2000-1000(0)

こんなのを考えた。
考えた、ってったって、よくある奴だ。

このウマテーブルの特長の第一は、現行のシステムとの違いの微妙さだ。
よく起こるBトップやAトップにおけるトップ者の収入は、現行とまったく同じであるにも関わらず、最も頻繁に発生するB状態でのラスの支払いが 1000円少ない。 ツイてない時にはラスが続くもので(ツイてないって言うか、プッツンきた場合とか)、こんな時の支払いが少なくてすむのはトータル的にはかなり出費を押さえることになるような気がするのだ。 つい最近、アタキは実際に、六連続ドベなんて記録も作っている。
また、浮き沈みの状態の違いはそのままトップ者の収入に結びついているので、戦略面でのコクが増すのも当然ではあるが、これはダンラス状態の人間にとっても、浮きの人間が増えてくれることが自分の利益に繋がるという、素敵な効果もある。
そう、これが「仕事」なのだ。 某雀鬼会のシステムの特徴の一つであるこの「仕事」という概念の始まりは、漢(おとこ)がどーたらこーたらでなく、実はこうしたウマのシステムから導かれたものなんである。 あ、いや、別にどーでもイイことだが。

それ以外にも、「全員沈み状態を目指す価値が今よりも増す」だとか「Cトップを喜ぶのはトップ者でなくラス者であるという新しい価値観の創造」だとか「トップ者以外の打ち手が浮くのは自分の為でなく、沈んでいる人間の救済の目的」だとか、色々と面白いことが起こってくる。


なんて提案をやったアタキであるが、この提案が採用されるかどうかは今の所、不明だ。
経営者サイドが直面している問題に真正面から取り組んだ解決方法ではないけど、まぁ、ウマの在り方について色々考える契機を貰ったことに感謝、感謝なんである。